アクリルテクニック

●制作のコツ
アクリル絵具は非常に乾燥が早いので、手元にある絵具を乾かさないようにすることが最も重要。その他にも濡れている時の色と乾燥後の色の違い等、いくらかの癖はあるが制約は少なく、乾燥にさえ注意すれば非常に扱い易い絵具といえます。

・ウェットパレットを使う
 手早い作業に慣れないうちはウェットパレットを使うとパレット上での乾燥を遅らせることができる。市販のウェットパレットを使うのも良いが、普通のパレットに湿らせたティッシュをのせて代用することもできる。ウェットパレット上でナイフを使うのは(特に代用パレットでは)繊維が絵具に混ざったり紙が寄ったりするので使いにくい。その場合は合成繊維でできた丈夫な布を濡らして使うとよい。
・混色は多めに
混色した絵具が乾いてしまうと同じ色をもう一度作る事が難しい為、同じ色が必要になる場合は少し多めに色を混ぜてふたのしっかりと閉まる容器に保管する。水が腐ったり、カビの生えることがあるのでなるべく早めに使い切る。
・制作を中断する時にはラップをかける
短時間席を離れる際は、霧吹きでパレットに水を補給しておけば絵具を固まらせることなく保っておくことができる。長時間席を離れる際は、軽く水を吹きかけてラップをかければある程度おいておくことができる。
・道具はこまめに洗う
道具の材質によっては絵具が固まると使い物にならなくなってしまうので、少しの間でも使わない道具はこまめに洗うか水につけておくとよい。
・濡れ色と乾き色に差がある
アクリル絵具は乾燥する前の色と乾燥した後の色が異なる。乾燥すると色が少し沈むので混色の際はほんの少し明るめに作るとイメージに近い色を作る事ができる。濡れ色と乾き色の差は、メーカーや色によっても差が出るのである程度の慣れが必要。差を把握するには一度試し塗りをして乾かしてみるのが確実。

・透明・不透明を使い分ける
アクリル絵具はリキテックスに代表されるような透明のものと、アクリルガッシュに代表されるような不透明のものとがある。これらはちょうど透明水彩と不透明水彩のような関係で、隠蔽力はガッシュ、不透明色、半透明色、透明色の順に弱くなってゆく。ラベルに書かれていることがほとんどなので、塗り重ねが重要な場合注意したい。

・紙に描く場合は水張りすると波打たない
点描や細密のように一度にのせる絵具が少量な場合や、ドライブラシのように水を含む量が少ない場合は紙が波打つ事は少ないが、そうでない場合はたとえ薄塗りでなくとも紙が波打つ事が多い。これを防ぐためには水張りをするとよい。

●厚塗りをする
アクリル絵具はガッシュを除いたほとんどの絵具でそのまま厚塗りすることができる。ガッシュの場合はそのまま厚塗りするとひび割れるので、メディウムを混ぜて厚塗りをする。
アクリル絵具で極端な厚塗り(盛り上げ)をすると絵具の表面のみが乾燥し、中がぶよぶよのまま乾燥しない事がある。その他にも水分の蒸発により縮んでシワになる事もある。これらを避ける為には一度に絵具をのせずに、少しずつ塗り重ねるかメディウムを使用する。
○盛り上げる
盛り上げの際にはメディウムを使用する。盛り上げに使うメディウムにはツヤの有無、エッジの鋭さ、肌合いなどで様々な種類がある。
●薄塗りをする
アクリル絵具はそのまま薄めることで水彩風の塗りをすることができるが、多量の水で薄めるとつやが引く。つやを保つには専用の薄め剤を使用するかグロスメディウムを少量混ぜると良い。薄塗りをする場合は顔料濃度の高い絵具を使うと発色を損なわない。
○にじみ・ぼかし・たらしこみ
支持体が紙の場合は、オックスゴール等のメディウムを使ってにじみの度合いを調節することができます。素材の種類・紙の種類によっては最初に濃い色をのせてから水でぼかそうとすると最初の色が染みついて筆跡を残すことがあるので、先に水をひいてから絵具をのせると滑らかなにじみができる。にじみのような一発勝負の技法では、先に同じ素材で様子を見ておくと予想外な効果が出ることが少ない。
●テクスチャを出す
各社から出ているメディウムを混ぜ合わせる事によって絵具に様々な質感を与えることができます。また、アクリル絵具は非常に接着力が強いのでおがくずや砂・ビーズ等を絵具に混ぜて使うことができます。

●様々な素材に描く
アクリル絵具は固着力が強く、またアルカリに強い為他の絵具では描けなかったようなものにも描く事ができます。
基本的には以下の点を守ることにより、より定着させることができます。
・表面の汚れ(特に油分)を取り除く
・つるつるしたものには紙やすりをかける
・素材に合ったジェッソやプライマーを使う
素材別下地づくりと注意点
[紙]サイズの強さを操作することができる。下地はジェッソでつくる。
[キャンバス]水性キャンバスを使用する。油性キャンバス(油彩用キャンバス)を使うと劣化・剥落の原因となる。下地はジェッソで作る。
[木]下地はジェッソで作る。
[布]布描き用の絵具を用いるか、しみこませるように描く。
[金属]サンドペーパーをかけた後メタルプライマーを塗布するか、金属にも塗れる絵具を使用する。水性絵具を使うと錆びが出ることもある。
[陶器]陶器用のアクリル絵具を使い、焼きつける。
[ガラス]ガラスプライマーを塗布するかガラス用のアクリル絵具を使用する。

●コラージュする
アクリル絵具は非常に接着力が強いので、画面の中に他の素材を貼りつけることができます。厚塗りの乾いていない画面の上に直接のせるか、グロスメディウムを用いて貼り付けます。コラージュに使える素材は下地に使える材料とほぼ同じ条件で、油分のあるものは適さない。金属、強吸水のもの、ガラス等はその素材に適したプライマーを塗布するとより定着する。アクリル絵具のみを接着剤としてコラージュする場合、大きいもの・重いものをコラージュしようとすると剥落することがあるので他の方法と組み合わせるとよい。
●他の画材と併用する
アクリル絵具は他の画材と併用・混色することでまた異なった表情を見せる。混色は透明水彩、不透明水彩、ビニール絵具等の水彩絵具との混色が可能だが、それらの水彩絵具の割合が高くなればなるほどアクリル絵具の性質は弱まり、混色した絵具の性質が強くなる。
岩絵具との混色も可能で、水を多くすると岩絵具の粒子が沈み不均一になる。
アクリル絵具の性質を保ったまま岩絵具を使いたい場合は岩絵具をにかわで溶かずに直接アクリル絵具に混ぜる。
アクリル絵具は油性の絵具の上から塗り重ねる事はできないが、アクリル絵具の上に油性の絵具を塗り重ねることはできる。だが、後になって剥落したケースもあるので安全とは言いきれない。水彩絵具、岩絵具の上にアクリル絵具をのせる事については問題無い。
●版画のインクにする
アクリル絵具は孔版(ステンシル、シルクスクリーン)のインクとして用いられることも多い。シルクスクリーンの場合使用できるメディウムは限られるが、ステンシルの場合はメディウムを混ぜることもでき表現の幅を広げることができる。
●エアブラシ
アクリル絵具はエアブラシ用の絵具としても使う事ができる。どのアクリル絵具でもエアブラシで使う事ができるが、特にエアブラシに適したエアロフラッシュやリキテックスソストタイプ等の絵具もある。水で薄めるので水が多いほどつやが引くが、グロスメディウムを混ぜるとつやを損なわない。
●細密表現
アクリル絵具は一度乾くと耐水性になり、重ね塗りの際にも下の筆跡に影響することが無い。また、透明感を生かすことも不透明に抑えることもできる為細密表現のしやすい画材である。アクリル絵具用の合成毛でできた筆には特に先がきいて細い筆が多く、それらを使うとより細かい表現ができる。
●マスキング
マスキングをすることによってシャープな表現や効率の良い塗り方をすることができる。特にアクリルガッシュで平滑な塗りをする際にはマスキングをすることによってより平滑な色面をつくることができる。
●ドライブラシ
●スクラッチ
●スパッタリング
●デカルコマニー
●フロッタージュ
●バチック
●画面の保護
アクリル