油絵具の乾燥

油絵具がべたつかなくなり、固着する事を乾燥という。
水が乾くのとは異なり、乾性油が空気中の酸素と重合して起こる化学変化のことを指す。
水彩の場合は水が蒸発した分絵は軽くなるが、油絵具の場合は酸素分子のぶんだけ、わずかに重くなる。

絵具のチューブに記載されている乾燥日数はあくまで指触乾燥で、中まで完全に乾燥するには半年程度かかる。
それよりも早く保護ワニスをかけてしまうと表面の白濁や様々なトラブルの原因になるので注意する。

油絵具の乾燥を早める方法は3つある。
(1)シッカチフを加える
(2)クイックドライメディウムやクイックドライオイルを使用する
(3)環境を整える
(4)乾燥の速い色を使う

(1)シッカチフ

シッカチフは鉛、コバルト、マンガンなどの金属塩で、酸素を運び入れ酸化重合の促進剤としてはたらく。
入れすぎると画面の黒変や表面の皺の原因になるので絵具の量の30%にとどめるようにする。
シッカチフは画用液に混合して使う液状のものとチューブに入って練られているパートシッカチフがあり、パートシッカチフは絵具の粘度を下げずに使う事ができるので盛り上げやタッチを生かした表現に向いている。

(2)クイックドライメディウムや、クイックドライオイルを使う

絵具の中に含まれる樹脂の揮発乾燥を利用して乾燥を速める方法。
コーパル樹脂、ダンマル樹脂、ケトン樹脂などを配合し、絵具中の乾性油の割合を少なくしている。
シッカチフと異なり混ぜすぎによる失敗がなく、受験用や練習用の速乾油絵具はこういった樹脂を含んでいるものが多い。

(3)環境を整える

油絵具が乾燥するのに最適な環境は、気温20℃前後で換気が良い事。夏の窓際のような場所がベストで、最後に筆を置いてから6ヶ月~1年程度は風の通る場所・密閉しない場所に置いておく方が良い。

(4)乾燥の速い色を使用する

油絵具はそれぞれの色(使われている顔料)によって乾燥度(乾燥する速さ)が異なる。
無機顔料は有機顔料に比べて粒子が大きく、吸油量が少ない。また、無機顔料に含まれる金属がシッカチフと同様に油の酸化重合を促進する働きをし、乾燥が早くなる。
有機顔料は粒子が細かいので、絵具にするためには無機顔料よりも多くの油が必要になりその分乾燥も遅い。

また、淡い色調の色は暗色と比べて乾燥が遅い。
淡色は乾燥が遅く黄変しにくいポピーオイルが使われていることが多く、
暗色には乾燥が速く黄変しやすいリンシードオイルが使われるためである。